‘Ferrari’ カテゴリーのアーカイブ
夕闇が迫りくる時間帯であります。
お客様が大事にされているF355スパイダーがフロントガラス交換のご依頼で入庫してまいりました。
お客様はきれいにされてるようですが、プロの見るところは基本的にキワをよく観察します。
むむ・・修復歴がありそうです。 それもかなり雑な仕事をされたかもしれない・・・
恐るおそるガラスをはずしてみたらOh My Got! 想像以上にひどい事になっています。
F355のボディフレームの特徴は、特にガラスの下側(ダッシュボードの付近)を注意しなければいけません。
水抜きの穴などの処理がされていませんので、上から落ちてくる雨水などはボディ下側に溜まってしまいます。
ボディに小さい傷を付けただけでも、時間がたてば鉄が腐るといったような状態になってしまいます。
穴が開いてしまった所までは行ってませんが、酸化した鉄板を直さなければシーリングができません。
地道な作業になりますが、まず錆を落としてから強力な錆止めを塗ります。
その錆止めの上にシーリング材が乗るわけですから、シール材と錆止め剤の相性も考えなくてはなりません。
下地が完成してようやく取り付け工程にかかれます。
この手のスポーツカーはゆっくりとしたエコ運転で走る乗り物ではないと誰もが知っています。
サーキットなどで限界を極めるといったような走りが醍醐味です。
実はガラスを取り付けているシール材もボディフレームの強度にかなり影響しています。
下地が悪いとガラスが飛んで行ってしまうことも考えられるので、安易な仕事は控えた方が賢明かと思います。
フェラーリ512TRがフロントガラス破損状態で入庫してまいりました。
下の方から割れていますが外側には傷がありません。 お客様から事情を聞かせていただくと、
ダッシュボードが変形していて、そこにオモリを置いていたとの事らしいのです。
なるほど! 急ブレーキをかけてガラスの内側にオモリがヒットしてしまったようです。
さっそく新品ガラスも準備整っておりますのでガラスを外します。
ついでに、お客様がダッシュボードにオモリを載せていた場所あたりも一緒に矯正しましょう。
ダッシュボードの革を剥いでいきます。 画像ではわかりにくいですが、確かに微妙に変形しています。
恐らく室外で長い時間の放置による熱変形で間違いないでしょう。
無視すれば何のことでもないのかもしれませんが、気になり出すと何とかしたいというのが心情でしょうから・・・
革からスポンジまで全部はがし、浮いている所にリベットなどで固定します。
それから革などを元通りに戻してあげれば、綺麗なラインが再生されます。
メイン修理はフロントガラスですが、まさしく追加サービス作業となってしまいました。
しかしお客様は大変喜ばれたのであります。
F512Mのフロントガラス交換とボディコーティングを施工します。
塗装作業と同時進行で進めていきたいと思います。
512モデルと言ったら80年前期からのテスタロッサから90年中期のMまで
10年以上続いたスタイルです。
バブル時代の象徴とも言えるフェラーリらしい車かと思います。
512Mは足回りやトランスミッションなど前期のテスタロッサより進んだ良く出来た車に
仕上がっておりますが、ボディ形状はほとんど変わっておらず特にガラスは一種類に統一されてしまいました。
黒塗り(セラミック)形状やアンテナ配線の位置など新車時と変わってしまいます。
作業するものが工夫しなさいということです。
まぁよくある事なので足りない配線を作るしかありません。
下地完成です。 今日のところはガラスをボディに取り付けて後日モールの取り付け、その他細かいところを
仕上げていきます。 以降数日後と続きます。
ミラーベースのところですが、ガラスに鋳物が直接当たるわけですので取り付けに工夫が
必要となってきます。 オリジナルにこだわらない所もある意味必要ですね。
ウレタンシールで固めればそこがラバークッション状になり、ミラーに頭がぶつかってガラスが割れたなんて
事はもう無くなります。
アンテナ配線もシールが固まってからのほうが、トラブルもなく綺麗に仕上がります。
塗装も終わってかなり時間が経過しておりますので、コーティング作業も準備にかかれます。
ウィンドモールの取り付けにかかります。 クリップ類はいっさい使っておりません。
シーリングの張力でアルミモールを形付けます。
目に入る隙間も綺麗に慣らしていきます。
この当時のフェラーリはシリアルナンバーがサンドブラストによって
刻印されます。 そこはオリジナルを意識しないといけませんね。
コーティングも大変良い感じで塗装に浸透しております。
ソリッドカラーの赤が見る者の目に強烈に焼きついてきます。
9割がた完了です。 テスタロッサの最終型ですから乗り心地も
いいんでしょうね。 個人的に欲しい一台です。
LM仕様に作られたフェラーリ40のフロントガラスを交換します。
LMとはレースに勝つためだけに、フェラーリ公認のミケロットで作られたモデルのようです。
本物のLMのフロントフードは画像のように開けるのではなく、取り外し可能なフードなのです。
90年代に数台しか作っていませんので、私本物のLMは写真しか拝見しておりません。
さて新品のガラスを早速見てみましょう。
合せガラスの間にヒーター熱戦が付いています。
この作り方が国産品やドイツ車製品と違ってなんともイタリヤンなのです。
コの字型でガラスに挟まっていたのはとても大きいターミナル端子ですが、これが全ての仕上がりを
邪魔してしまいます。
ガラスの上にアルミモールが乗ってラインが決まっていくので、大きいものをそれなりに
加工します。
新品ガラスがセットできたら割れてしまったガラスを取り外します。
F40初期型は左側のみに配線ホールがあります。 ガラスを新しくしてしまうと
右側にも穴を開けて配線しなければいけません。
イタリヤ車の新品部品は、作業する人で良いものかダメなものか決まってしまうと
言っても過言ではないでしょう。
だいたいカタチが整ってきました。
もちろんの事、モールのつなぎ目は妥協してはいけません。
1ミリのずれも許してしまったら、今までの苦労が水の泡です。
オリジナルのステッカーも再使用となります。
最後はシーリングをして仕上げます。
完成です。 オリジナルのF40もかっこいいですが、LMスタイルは圧倒感がありますね。
やはりデザインの国イタリヤ、特にミケロットチューニングは脱帽であります。
今回も町田市にある”アライバンキン”さんで作業です。
仕上げ途中のF40のテールゲートにウィンドスクリーンを取り付けます。
ウィンドスクリーンといってもガラスではありません。 ポリカーボネイト、つまりプラスチックのような素材です。
ポリカーボネイトは耐熱性に優れていますので、エンジンの近くでも問題なしという事なのです。
ただしキズが付きやすい事と、油類に非常に弱いことが欠点です。 表面にガソリンがついてしまうだけで
素材を壊してしまいます。 灯油がついてもそのままにすると表面を侵してしまいます。
大変神経をつかいます。
ボディ側を作ります。 バネ材でできたクリップをリベットで固定します。
ひと回りクリップを付けます。 これがアルミモール止めとなるのです。
モールが見た目を作りますがそれ以上に、ウィンドを固定すると言うことも兼ねています。
リベッターです。 フェラーリにリベットを打つときは、これぐらい薄いリベッターを使わないと色々な意味で
痛い目にあってしまいます。 3.2ミリ用で厚さ12ミリのリベッターです。 ちなみにDIYでは売ってません。
モールがこんな感じに付きます。 つなぎ目は左右下側です。
新品モールは長めに作られてきます。 車に合わせて加工します。
ココのところが仕上がりを大きく左右するのです。
仮付けですが決まりました。
モールの加工が終わったら、次はウィンドをきれいにします。 ガラスではないので樹脂専用コンパウンドで
磨きます。 ガラスクリーナーを使ったら真っ白になってしまいます。
ウレタンシールですと素材にあわないのでやわらかいシールを使います。 樹脂ウィンド、特にポリカーボネイトはシールが付きにくく、下地を上手く作らないとすぐ剥離してしまうので非常に緻密な作業を必要とされます。
モールの内、外側にシーリングをして完成です。
かっこいいですね。 ところで世界中にフェラーリコレクターが350人いられるそうです。 この様なスーパーカー
は349台限定で作るらしいからイタリヤ人はやらしいなーと思ってしまいます。 ただしF40はあまりにも人気が
ありすぎて後から追加生産1000台以上されたとのうわさです。 誰もが認めてしまうかっこよさという所で
しょうか。
待ってました。 ようやく新品モールの
入荷です。
バンパーも取り付けられ、残るはガラスのみと
なってしまいました。 やっぱり355はカッコいいな~。
モールとガラスを組み付けて、さっそく仮付けです。
いいですねー。 ボディとフラットなラインを作れると
バッチリです。 ガラス側との隙間もありません。
塗りたてという事もありますが、この輝きは見事です。
塗装とガラスを綺麗にするのならば、ついでに内装も
磨きましょう。 これは皮専用クリーナーですが、ただの
艶だしではありません。 実は私の革ジャンとリーガル
にも使っています。
接着面は脱脂と清掃をしてから表面活性剤を使います。
どうしても付いてしまう小キズは、プライマーを使用します。
シーリングの開始です。
ボディ側にシーリングをします。
ちょっとずれたかな・・・
とりあえず圧着します。
ミラーベースから上を撮りました。 先程のずれたシールも
完璧です。
上側のボディとのラインもすっきりですね。
まだここからが神経を使う工程が残っています。
オリジナルは、左下にシリアルナンバーが刻印されています
ので、同じようにサンドブラストで施工します。 ・・というか
仕上がったガラスを最後に削るような事をしなくてはいけないのです。
綺麗にできました。
最後にモールとガラス側にシリコンでシールします。
シリコンも色々ありますから、なるべくオリジナルに近い
材質を選びます。
こんな感じです。
ついでにルーフモールもシールしてしまいます。
整いました。 完成です。
五月晴れで気分の良い仕事日和です。
今日は東名高速、横浜町田インターチェンジからすぐの
アライバンキン様で、フェラーリ355のフロント
ガラスの交換をさせていただきます。
さすがフェラーリの事ならおまかせといった工場内です。
社長にフェラーリの事を語っていただくと、本当に情熱のすごさが
伝わってきます。
このスパルタンな355を作業させていただきます。
やはり、道路を走行すれば必ず傷がつくと言うのならば、
前廻り、特にガラスはタイヤと同じように消耗品だと感じて
しまうのです。・・・ 商売上手でしょうか?
まぁ つべこべ言わずにさっさと仕事に取りかかりましょう。
室内トリムなど、ひと通りはずしてからガラスがはずせます。
はずしてから気づいたのですが、数年前に私が一度施工した
お車だとわかりました。
我ながら完璧なシーリングと下地作りだな~と自負してしまい
ました。 サビも、もちろんありません。
新たに下地作りをしますが細かいところでは彫刻刃を使います。
少しでもボディ側にキズを付けたくないからです。
見えないところに気を配れば、年月が経てば経つほど仕上がりに
差が出るものだと思います。
こんどは新品モールの曲がりを合わせます。
これだけアールが合わないと泣けてきますね。
だいたい形が整いました。
今度は下側のモールですがちょっと心配です。
少々心配ですが、新品ガラスと曲げを合わせたモールを
組んでボディに仮付けしてみます。
やっぱり! ガラスとモールの間が異常に隙間がある!!
何時間も合わせて見ましたが、これ以上は無理かなと
判断し、モールだけを発注し直す事にしました。
イタリヤ車の特徴ですね。 国産車みたいに半日で終わる
なんて事はめったに無いです。 じっくりと慎重にやりましょう
という事で・・つづきはまた今度です。